「オンラインコミュニティ」とは、共通の関心事のある人同士が交流できるネット上の場を指す言葉です。
たとえば、SNSやフォーラム、オンラインサロンなど、さまざまなオンラインコミュニティが存在します。
なかでも、経営者やマーケティング担当者が押さえておきたいのは、「自社ブランドのためのオンラインコミュニティ」を形成する企業が増えていることです。
この記事では、オンラインコミュニティの基本から自社のマーケティング活動のために知っておくべき最新情勢まで、以下のポイントをわかりやすく解説します。
・オンラインコミュニティとは何か?
・主要なオンラインコミュニティの4種類
・今オンラインコミュニティに取り組むべき理由
重要度が高まるオンラインコミュニティの情報をキャッチアップして、自社のマーケティング活動にお役立てください。
最初に、オンラインコミュニティとは何か、基本の意味から押さえておきましょう。
オンラインコミュニティとは、インターネット上でメンバー同士が互いに交流するコミュニティのことです。
通常、コミュニティのメンバーは共通の趣味や目的など、同じ関心事を共有しています。
辞書的な語句の意味としては、
〈インターネットを通したネットワークで、人と人の交流でできる仮想の場〉
と説明されています(出典:情報・知識 imidas)。
前述の説明では、
「オンラインコミュニティの範囲は、非常に広いのでは?」
と感じた方もいるかもしれません。
そのとおりで、たとえば原語である英語のWikipediaでは、以下のように解説されています。
Commonly, people communicate through social networking sites, chat rooms, forums, email lists, and discussion boards, and have advanced into daily social media platforms as well. This includes Facebook, Twitter, Instagram, Discord (software), etc. People may also join online communities through video games, blogs, and virtual worlds, and could potentially meet new significant others in dating sites or dating virtual worlds.
(訳) 一般的に、人々はSNS、チャットルーム、フォーラム、Eメールリスト、ディスカッションボードを通じて交流し、日常的なソーシャルメディアプラットフォームにも発展しています。これには、Facebook、Twitter、Instagram、Discord(ソフトウェア)などが含まれます。また、ビデオゲーム、ブログ、仮想世界を通じてオンラインコミュニティに参加することもあり、出会い系サイトや出会い系仮想世界で、新しい大切な人に出会う可能性もあります。
広義では、SNSからフォーラム、出会い系サイトまで、ユーザー同士がオンライン上で形成するコミュニティは、すべてオンラインコミュニティに含まれるといえます。
語句としては幅広い定義を持つ「オンラインコミュニティ」ですが、主要なオンラインコミュニティは次の4種類に区分できます。
それぞれ掘り下げて見てみましょう。
1つめは「企業運営のコミュニティサイト」です。
企業が運営する「自社や自社ブランドのためのコミュニティサイト」は、最も注目すべきオンラインコミュニティです。
2010年代後半より米国企業を中心に加速している動きであり、経営者やマーケティング担当者にとっては、ホットトピックとなります。
※詳しくは、後ほど「3. オンラインコミュニティの最新情勢」にて解説します。続けてご覧ください。
企業運営のコミュニティサイトは、ブランドと顧客との間に心理的な絆を作り、エンゲージメントを深めて、LTV(ライフタイムバリュー:顧客生涯価値)の向上に貢献します。
▼ 企業運営のコミュニティサイトの例
・BASE FOOD Labo(ベースフード株式会社)
・ホットクック部(シャープ株式会社)
・テレ東ファン支局(株式会社テレビ東京)
2つめは「ナレッジコミュニティ」です。
知識の共有や学習を目的としたコミュニティを指し、広義では、Wikipediaもナレッジコミュニティと分類されることがあります。
Yahoo!知恵袋のようなQ&A形式や、ユーザーが自身のナレッジを投稿する形式などがあります。
▼ ナレッジ共有コミュニティの例
・Yahoo!知恵袋(知恵共有サービス)
・Qiita(キータ)(エンジニア向けコミュニティ)
・アットコスメ Q&A(美容のQ&Aコミュニティ)
3つめは「専門家ネットワーク」です。
専門的な資格を持つ人だけが入会できる、オンラインコミュニティとなります。
人脈の形成や現場での悩みの共有、ビジネス上の有益な情報交換など、コミュニティによってさまざまな役割で運営されています。
専門家ネットワークのオンラインコミュニティは、入会方法が一般に公開されていないこともあり、Google検索などではかならずしもヒットしません。
▼ 専門家ネットワークの例
・MedPeer(メドピア)(医師・医学生向け医療情報)
・ラジエーションサロン(診療放射線技師の情報交換)
4つめは「会員制コミュニティ」です。
会員にならないと利用できないものの、会員になることに特別な資格は不要のコミュニティがこの分類となります。
年齢制限など基本的な事項を満たせば、原則、誰もが入会できるコミュニティです。たとえば、オンラインサロンやマッチングアプリ(出会い系サイト)が該当します。
趣味、出会い、インフルエンサー主催など、会員制コミュニティの種類は多種多様です。
▼ 会員制コミュニティの例
・西野亮廣エンタメ研究所(オンラインサロン)
・Pairs(マッチングアプリ)
さて、ここからは、オンラインコミュニティの最新情勢について、見ていきましょう。
冒頭でも触れましたが、
「企業がマーケティング戦略の一環として、自社ブランドのためのオンラインコミュニティを構築する」
という動きが活発化しています。
米国でハーバード・ビジネス・レビュー(以下HBR)に、
「When Community Becomes Your Competitive Advantage(コミュニティが競争力になるとき)」
という記事が掲載されたのは、2020年1月のことです。
米国のマーケティング情勢は、数年以内に日本国内に浸透するのが常であり、まさに今、日本にも「オンラインコミュニティ」の流れが来ています。
HBRの記事では、セールスフォースの約200万人のメンバーからなる国際的なコミュニティが、セールスフォースの成功を支えていることや、ハーレーダビッドソン・フィットビットなど、多くの成功企業がコミュニティの力を活用していることが指摘されています。
なぜ、コミュニティの構築が、ビジネスの成功につながるのでしょうか。
HBRの記事で説かれているのは、企業は単に製品を提供するだけではなく、コミュニティを構築することによって、優れたビジネスモデルを生み出し、並外れた競争力を得るということです。
具体的には、次の3つのポイントです。
1. コミュニティの熱心なメンバーが、新規顧客の獲得に貢献し、顧客獲得コストの削減と強力な拡散ループが実現する。
2. メンバーは、コミュニティから離れにくい心理になるため、顧客維持率が向上し、LTV(顧客生涯価値)が向上する。
3. メンバー同士が助け合うことで、カスタマーサービスのコストが削減され、利益率が高くなる。
参考:When Community Becomes Your Competitive Advantage
続いて、ユーザーの視点からオンラインコミュニティをとらえてみましょう。
オンラインコミュニティプラットフォームの市場規模は、2022年に急拡大が予測されています。
その背景にあるのが新型コロナウイルスの影響です。*1
オフラインで直接触れ合える機会が減った分、その穴埋めをオンラインコミュニティに求めたユーザーが多かったと予測されます。
しかし、これはコロナ禍における一過性のブームではありません。新型コロナウイルス以前より、ユーザーの意識変化が観測されていたからです。
2019年時点で、
〈ユーザーは、自己発信としての共有から、コミュニティを中心とした共有へと移行しており、ここ数年で、オンラインコミュニティに参加するユーザーが著しく増加している〉*2
と指摘されています。
1:Online Community Platform Market 2022 to Showing Impressive2:The Rise of Online Communities GWI
以上からわかるのは、
「オンラインコミュニティは、企業視点・ユーザー視点の双方からニーズが高まるタイミングが重なり、急拡大中である」
という事実です。
オンラインコミュニティは、単なる「ネット上でユーザーが交流する場」という語句としての意味を理解するだけでなく、2020年代のマーケティングのホットワードとして、押さえておくべき事項といえます。
実際に、すでに取り組んでいる先進企業の事例は「導入事例」にまとめていますので、ご覧ください。
▼ とくに参考になるおすすめ事例
・ベースフード株式会社
「ユーザーがユーザーに働きかける好循環。コミュニティ内の投稿が商品理解の促進と新商品アイデアの源泉に」
・ライフ&ワークデザイン株式会社
「コミュニティ活用で見えてきたオンラインとオフラインの融合。会員同士のマッチングで生まれる新たなビジネス機会」
・オーエス・シネブラザーズ株式会社
「地元密着でファンマーケティングに取り組んできた映画館が挑戦するオンラインコミュニティとは」
・株式会社バケット
「お客様の声で発展し続けたベーカリーレストラン。コロナを起点に顧客接点のデジタル化へ。ユーザーによる商品開発とアンバサダーマーケティングに挑戦 !」
「自社でも、オンラインコミュニティの立ち上げを検討したい」
という場合、留意したいポイントがあります。
・「WHAT」ではなく「WHO」からスタートする
・コミュニティは「生き物」としてじっくり育てる
・オンラインコミュニティのための「新たなリソース」を確保する
・オンラインコミュニティの「専用プラットフォーム」を使う
・「きめ細やかな運営」でトラブルを避ける
それぞれ見ていきましょう。
1つめのポイントは「WHATではなくWHOからスタートする」です。
オンラインコミュニティは、WHAT(企業が何をしたいか?あるいは、何の成果を得たいか?)からスタートすると、高い確率で失敗します。
WHO、つまり、そのコミュニティに参加するのは誰で、その人たちはどんな人なのか?を起点として、あらゆる設計を行うべきです。
コミュニティとは、参加する人たちにとっての「居場所」です。イメージとしては「家」を設計するときに近いといえます。
よい家を設計するには、その家に住むのは誰で、何が好きなのか、どんなふうに過ごしたいと思っているのか、住人のことを十分に知らなければなりません。
オンラインコミュニティも、まずは住人となるユーザーを特定し、その人たちを深く理解するところからスタートしてください。
2つめのポイントは「コミュニティは生き物としてじっくり育てる」です。
オンラインコミュニティに限らず、何らかのコミュニティを運営したことがある方なら、コミュニティは呼吸していて、生きていることが感覚的に理解できるかもしれません。
まるで意志のある生き物のように、ときには非合理的な方向へ変化したり、あるいは意図せず急成長を遂げたりすることもあります。
コミュニティは、かならずしもすべてが企業の思惑どおりとはなりません。
じっくりと中長期的な視点を持って育てる視点が、重要になります。
この視点が、担当者はもちろん、社内に浸透していないと、オンラインコミュニティは志半ばで挫折することになります。
実際、辛抱強く育てるべき期間に社内の理解が得られず、途中でクローズしていくオンラインコミュニティは珍しくありません。
3つめのポイントは「オンラインコミュニティのための新たなリソースを確保する」です。
多くの組織にとって、オンラインコミュニティという生き物を育てる仕事は、初めての体験です。
従来の業務とはまた別の、オンラインコミュニティをマネジメントするための能力と時間、熱意が必要になります。
このリソースの見積もりが甘いと、質の低いオンラインコミュニティになってしまい、望ましい成果を得ることができません。
質の低いオンラインコミュニティは、ユーザーにネガティブな印象を与え、最悪なケースでは顧客離れの引き金になりかねません。
オンラインコミュニティのためのリソース(社内人材の確保、社内人材でまかなえない分はアウトソーシングする予算の確保)は、事前によく検討しましょう。
4つめのポイントは「オンラインコミュニティの専用プラットフォームを使う」です。
たとえば、FacebookをはじめとするSNSを、コミュニティの場とすることもできます。しかし、企業が運営するオンラインコミュニティは、企業向けの専用のプラットフォームを利用するのが一般的です。
その理由は、大きく3つ上げられます。
・仕様やデザインなど自社でコントロールできる
SNSではカスタマイズ可能な部分が限られる。運営元の仕様変更があれば、従わなければならない。専用プラットフォームを利用すれば自社のコントロール下で運営可能。
・高いセキュリティを実現できる
個人情報の適切な管理や参加ユーザーのプライバシーなど、必要なレベルのセキュリティを自社の裁量で実現できる。
・データを取得しやすい
オンラインコミュニティは、VOC(顧客の声)や顧客体験向上に役立つ行動データなど、貴重なデータが蓄積される場でもある。専用プラットフォームならデータの収集や一元管理が可能となる。
オンラインコミュニティの専用プラットフォームは、さまざまなベンダーが提供しています。
弊社commmune(コミューン)も、そのひとつです。詳しくは「commmune(コミューン)|コミュニティサクセスプラットフォーム」をご覧ください。
5つめのポイントは「きめ細やかな運営でトラブルを避ける」です。
オンラインコミュニティは、「関係づくり」に適した場です。
踏み込んでいえば、
「ユーザーとユーザーの人間関係、あるいは、ユーザーと企業・ブランドとの人間関係」
が構築される場が、オンラインコミュニティとなります。
職場や家族、友人との人間関係で、さまざまなトラブルが起きるように、オンラインコミュニティも、トラブルが起きることがあります。
たとえば、古参のユーザーと新しいユーザーで派閥ができたり、ユーザー同士の揉め事が起きたり……といった具合です。
「デリケートな人間関係を扱っている」という自覚を持ち、人の心の機微に気配りできる、きめ細やかな運営が求められます。
※企業のコミュニティサイトを作る具体的なプロセスや、より詳しい運営のポイントは、別記事の「コミュニティサイトとは?基本から作り方・運営のポイントまで解説」にまとめました。続けてご覧ください。
こちらの資料では、コミュニティ運用でよくある失敗を紹介しています。
上記の留意点に加え、気をつけるべきポイントを解説しています。
本記事では「オンラインコミュニティ」をテーマに解説しました。要点を簡単にまとめます。
・オンラインコミュニティとは、共通の関心事のある人同士が交流できるネット上のコミュニティ
・SNSからマッチングアプリまで、オンラインコミュニティの語句が指す範囲は広い
主要なオンラインコミュニティの4つの種類として、以下をご紹介しました。
・企業運営のコミュニティサイト
・ナレッジコミュニティ
・専門家ネットワーク
・会員制コミュニティ
オンラインコミュニティの最新情勢として押さえたいポイントは、以下のとおりです。
・コミュニティが企業の競争力になる時代
・コミュニティは優れたビジネスモデルを生み出す
・コロナ禍の影響とユーザーの意識変化により加速
・いま最も取り組むべきマーケティング施策のひとつ
オンラインコミュニティを立ち上げる際には、以下の点に留意しましょう。
・「WHAT」ではなく「WHO」からスタートする
・コミュニティは「生き物」としてじっくり育てる
・オンラインコミュニティのための「新たなリソース」を確保する
・オンラインコミュニティの「専用プラットフォーム」を使う
・「きめ細やかな運営」でトラブルを避ける
本記事執筆時点では、まだオンラインコミュニティを持たないブランドも多く見られます。
しかし、数年後には、「オンラインコミュニティを持って当たり前」の状況に変わる可能性は、高いでしょう。
自社のブランドでは、どうオンラインコミュニティを取り入れていくべきか、具体的に計画すべきフェーズに差し掛かっています。
本記事をきっかけとして、社内で具体的な議論を進めていただければと思います。
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