※この記事は、2022年2月16日に開催した、ウェビナー「いわくまのカスタマーサクセス向上委員会 #2 立ち上げフェーズで経験者なし 非SaaS型無料アプリのCS採用と組織の作り方」の様子をまとめております。
登壇者情報
株式会社グローバ 佐藤 勇斗氏(以下、佐藤):株式会社グローバは2014年設立で、建設テック領域で事業を行なっております。「リフォームガイド」という事業から始まり、2020年11月に「クラフタ」という新規事業を立ち上げました。今回お話しさせていただくカスタマーサクセスは「クラフタ」での取り組みになります。
あまり知られていませんが、建設業界は市場規模が約56兆円と、日本で二番目に大きい市場です。従業者も約500万人とかなり巨大な市場ですが、実は情報共有に関してDX化が進んでいないという課題があります。
そもそも、建設業界の受発注の流れとして、まず大手ゼネコンがビルの建設や大型の土木設備の依頼を受けます。ただ、実際に施工に入るのは一次下請けと呼ばれる中小企業が多いです。そこからさらに、二次下請け・職人へと内容が受け継がれていきます。
この時の情報共有は、あくまで一例ですが、ゼネコンから一次下請けにメールで施工内容が渡り、そこからFAXで二次下請けに渡り、最後は電話やLINEによって施工内容が行き渡るといった具合になっています。
すると、情報が職人の方に伝わるまでに、どういったことが起きるのか皆さんイメージできるかと思います。「言ってたことと違う」「ツールをまとめてくれ…」「見積書どこいったっけ?」「現場の住所ってどこだ…」といった状態になるわけです。
こうした課題を解決するために、我々は施工管理に特化したコミュニケーションアプリを作っています。
右図の「建設業従業員数の割合」を見ていただくとわかるとおり、19名以下の会社様が全体の9割を占めています。そのため、我々は大手ゼネコンではなく中小企業をターゲットとし、クラフタを無料で提供しております。
2020年11月にサービスをリリースしてから、約1年程で452社に導入いただいております。資料数(現場写真や図面を登録している数)も2021年6月からの半年で約4倍になっており、浸透しつつあると言えます。
クラフタのCS組織についてですが、カスタマーサクセスマネージャーの私、カスタマーサクセスが3名と、サクセスサポーターが2名という構成になっております。
岩熊:カスタマーサクセスから他の部門へどういったフィードバックをしているのか、どういった連携をしているのか教えてください。
佐藤:まだサービスリリースから1年程しか経っておらず、プロダクト自体が完璧なものではありません。そのため、カスタマーサクセスが「お客様はどういう形で機能を使っていきたいのか」「誰がどういう時どういう状況に困っているのか」という部分をヒアリングしています。その内容をWebディレクターと議論しつつ、プロダクトに反映させています。
岩熊:全体像を棚卸ししたり、みんなで議論したりする機会は設けていますか?
佐藤: 今の段階でいうと、カスタマーサクセスメンバーが伺った意見を一旦全て私が集約しています。その上で、週に1回カスタマーサクセスメンバーとミーティングをし、ご意見を取捨選択しながら、Webディレクターの方に渡している形にしています。
岩熊:お客様のご支援のあり方に関して、リアルタイムで改善している段階かと思うのですが、CSのなかでこれは良い取り組みだなと思っていることはありますか?
佐藤:クラフタは無料で提供している分、お試し感覚で導入される場合がとても多い。そのため、蓋を開けてみると使ってないというケースが結構ありました。その点を改善するために、導入後5日間連続でお客様とコミュニケーションを取るようにしました。この時参考にしたのがRIZAPさんの取り組みです。
RIZAPさんは、ダイエットを始めるお客様との「コミュニケーション」を徹底しています。諦めさせないようにするというこの取り組みを、CSに転用したら継続率が高くなるのではないか。仮説を立て、実験として取り組み始めたら、初期に離脱するケースが6、7割くらい減りました。
また、お客様とコミュニケーションを取るツールもクラフタを使うようにしています。最初は、メール・電話をメインにしていたのですが、クラフタを通してお客様と繋がるようにしたことで、定着率がよりアップしているのではないかと思っています。
岩熊:フリーミアムモデルだからこその「難しかった」「面白かった」というエピソードはありますか?
佐藤:難しかったのは、解約が発生しないので、お客様が本当にツールを使っているのか否かが見えなかった点ですね。
初期の頃は全然判断できなかったのですが、今はちゃんと外部のツールなどを使用して把握できるようにしています。
岩熊:それはどう判断しているのですか?
佐藤:基本的には、ログイン率・案件登録やメンバー登録数を見ています。これらの数字を自動検出できるようにし、悪化する前の段階でフォローするようにしています。
岩熊:採用や組織づくりにおいて、良いカルチャーを維持したままスケールアップさせていくために意識していることはありますか?
佐藤:現段階のメンバー採用に関しては、“建設業界をアプリによってアップデートできる”ことにどれだけ面白さを感じているのかという点のみ重視しています。
そのため、代表やメンバーの書いた記事に共感していただいた方のみ面接にきていただくようにしています。
岩熊:情緒的な面でのカルチャーフィットでフィルタリングをかけているようなイメージですね。それは最初からできていたのですか?それとも不幸なミスマッチがあってそういった形になっていったのでしょうか?
佐藤:前職で各社の採用マーケティングを支援していた経験があったので、割と初めからどういった記事を出せば候補者様に刺さるのか理解していました。なので、採用に関してミスマッチで苦労したという経験はあまりないですね。
岩熊:御社ではどういう方が評価されるのでしょうか?
佐藤:実際のお給料に反映される評価軸のようなものはまだ設けていません。というのも、指標を置いたがために、“その指標のためだけに頑張れば良いよね”という考えに至ってほしくないからです。それぞれが「CSはこうあるべき」という固定概念から外れて、自由に思考しながら、お互いを同じレベルまで高め合うという文化を築いていきたいのです。なので、評価軸を決めるのはもう少し先かなと思っています。
岩熊:KPIを定めることで、それが目的化してしまうリスクというのはとてもわかります。セオリーのないドメインで勝負しているからこそ、特に初期は、想定していないことにカバレッジを広げたり、先回りして気づきを得ることが求められていると思うので、やることを規定してしまうのは厳しいですよね。
岩熊:チームづくりを進めていく中で、中長期的にどういうチームを目指していきたいという戦略があれば教えていただきたいです。
佐藤:私は、属人化というのも悪くないと思っております。メンバーがそれぞれの想いをもってチャレンジして、それが良い取り組みだったら横展開していけば、属人化から型化できるのではないかと考えています。なので、まずはそれぞれが属人化する力をつけていき、それが良い取り組みであったら、私の方で型化していくというのをチームとして目指していきたいなと思っています。
岩熊:型化って、そもそも型化することの解像度やレベルが高まって初めてするものですよね。そこの順序を間違えてしまうと、その瞬間に組織としてのアウトプットの最大値を規定してしまうことになるので、最大値を最大限引き上げてから初めて型化するべき、というのは私も痛感しています。
Q:お客様から様々な希望や意見が寄せられるかと思いますが、プロダクトへの反映についてはどのように確定・実装していますか?優先順位の決め方など、ルールはありますか?
佐藤:集約に関しては全て私がしており、件数の把握だったりランク付けをした上で、反映の優先順位は基本的に代表が決めています。 初期のフェーズであれば、マネージャーが巻き取った方が、方向性のブレがなくて良いのかなと思っています。
岩熊:マーケットが規定されてきたり、あるいは競合優位性としてどこにポイントを置くのかが見えてきたりして路線が固まってくれば、「レベニューインパクトによって優先順位をつけて改善をしていく」というマーケットインなアプローチがセオリーかなと思います。但し、初期の頃は「代表の意志で決める」というプロダクトアウトな姿勢も重要だなと思いますね。
Q:導入から浸透までどれくらいかかっているのか知りたいです
佐藤:もちろん各企業様のプロダクトによって変わりますが、当社では平均2ヶ月ぐらいですね。
岩熊:それは今後より短くしていくイメージですか?
佐藤:いえ、それくらいはかかるかなというイメージですね。2ヶ月サポートすれば、使われなくなるというケースはほぼなくなってきています。逆に、初期フェーズで使わなくなるとその後も使われないというのもほぼ実証されています。よって、各導入企業様ごとに適切な期間を絞って経過を追っていますね。
岩熊:お客様が価値を感じるまでの時間「Time to Value」は、基本セオリーとしては短ければ短いほど良いと言われていますよね。ただ現実問題として、全て1日2日でできるかと言えばそうではないので、適切な期間というのをちゃんと見る必要はあるかと思います。
一方で、お客様の規模が大きくなっていけば伸びていくのも必然的だと思うので、CSとしては、”短くできる余地はあるのか”という点もモニタリングしていくことが大事だと思います。
Q:CSのオンボーディングサポートは、無料で導入した全ての企業に対して行っていますか?ハイタッチ、ロータッチ、テックタッチの棲み分けはどのようにしていますか?
佐藤:全て行っています。弊社はフリーミアムなので、ハイタッチ、ロータッチ、テックタッチという棲み分けはしてないです。セグメントとして分けているのは業態ですね。例えば、リフォームの会社様や新築の会社様、もしくは設備工事専門の会社様といった感じです。
岩熊:クライアントが大きいからハイタッチ、小さいからテックタッチというのは思考停止してしまっているなと思います。タッチポイントのモデルは、「そもそもこのセグメントのお客様にはどれくらいの支援が必要なのか」という実務ベースと、「どれくらいの支援を行うことでどれくらいのリターンが見込めるのか」という期待LTVによって決めたら良いのかなと思います。
Q:定着率をあげるために、最初の5日間はみっちりコミュニケーションを取るとのことでしたが、どういった内容のコミュニケーションを取っていますか?建設業界の方は忙しい方が多いイメージがあり、なかなか返信が来ないのではないかと思います。何か工夫されていることはありますか?
佐藤:とても良い質問ですね。だいたい施策を1、2ヶ月やっていくと、メッセージは型化できてくると思います。“いつどういうお客様にどんなメッセージを送った方がいいのか”というのは全てテンプレを用意しています。
忙しい方が多いというのはその通りですが、導入したその日から5日間連続でメッセージを送っていると、結構お客様は返信してくれます。メッセージをアプリ内でやりとりしているのも大きいですね。
Q:フリーミアム企業を有料化していくアップセル戦略について教えていただきたいです
佐藤:基本サービスを無料で提供していく、という方向性は今後も変わらないです。周辺機能を追加したいというお客様は有料化していただくことになりますが、これをメインの収益源としてはあまり考えていません。
我々は簡単にいうと「建設業界版のLINE」を目指し、更なるマネタイズも実行していきます。まずは圧倒的に利用者を増やし、そのデータを活用したソリューションを提供しマネタイズしていきます。
岩熊: フリーミアムのサービスの場合、上手に有料化するためには(1)どこに有料化のポイントを置くのか、(2)ストレートフォワードな有料化のルートから外れたお客様をどうナーチャリングするのか、の2軸を重視すると良いのかなと思います。
(1)に関して言えば、活用促進された先に自然とお金払いたくなるポイントをいかにおけるか、が大事です。例えば、Spotifyのようにもうちょっと音楽を聞きたいなと思った段階で課金をさせる仕組みを作る、といったイメージです。
(2)に関して言えば、ストレートに営業をかけても難しいので、もう一度ゼロベースでアプローチをとっていく必要があると思います。例えば、業界のお役立ち情報のような、2歩くらい引いたコミュニケーションをとるイメージですね。
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お話を聞かせていただいた佐藤さん、ありがとうございました!
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