ここでは、カスタマーエクスペリエンスの言葉の定義や現状、注目されるようになった背景を順番に紹介していきます。
カスタマーエクスペリエンス(CX)とは、マーケティングから販売、カスタマー・サービス、およびその間のあらゆるポイントにおける顧客の体験価値のことを指します。カスタマー(顧客)が商品やサービスの導入を検討し、購入・利用、アフターフォローを受けるまでのすべてのエクスペリエンス(経験)を指しています。
似たような言葉に、ユーザーエクスペリエンス(UX)があります。これは、商品やサービスそのものに対するユーザー(利用者)の体験を意味します。つまり、ユーザーエクスペリエンスはカスタマーエクスペリエンスに含まれる、ということです。
例えば、ある不動産ポータルサイトを利用して、賃貸物件を探している顧客がいたとします。
まず不動産ポータルサイトでいくつかの物件を確認し、その中からある物件を選んで内見を申し込みます。不動産会社とのやりとりでいくつか手違いが発生したものの、担当者の対応に満足し、物件を成約しました。
このフローは、すべてカスタマーエクスペリエンスとなります。
一方、ユーザーエクスペリエンスは各企業のサービス提供範囲によって異なります。不動産ポータルサイトを運営している企業にとってのユーザーエクスペリエンスは、1・2、不動産会社にとっては3・4となります。
日経リサーチがビジネスパーソン1000人に調査した結果によると、
CX向上の取り組みが「進行中である」「検討・計画中」「必要だが未検討」と、必要性を認識しているビジネスパーソンの割合は過半数を上回る結果となりました。
しかし、CX向上の取り組みが進行中であると回答した人の割合が約2割に留まっており、CX向上の取り組みは注目を集めている一方で、取り組みに着手できていない企業が多いことがわかります。
参考 CX(顧客体験)向上、過半数が必要性認識 .日経リサーチ
CXが注目されるようになった背景には、企業の情報優位性が薄れたことが原因として挙げられます。また、顧客体験の重要性が高まったのはSNSなどを通じて情報拡散機会が拡大していることも大きな要因となっています。
過去1年間で、ある商品やサービスを利用するにあたって、期待外れ感や不満を覚えた顧客は過半数に上り、そのうち、内容を申し出るのは約3割ほどとされています。また、不満を申し出た際、企業側の対応に満足する顧客は約半数に留まると言われており、申し出なかった不満や、申し出た結果増幅された不満はSNSなどで拡散されていくこととなります。
こうしたことから、CX向上への対応は以前にも増して急務になっているといえるでしょう。
既に見てきた通り、CX向上の取り組みには多くのメリットがあります。
まず、商品やサービス自体の満足に留まらず、企業全体としてブランドイメージが向上します。CXが向上すると、リピーター獲得に役立つことはもちろん、他社への乗り換えを防止することにも繋がります。また、SNSなどを通じた口コミが拡散することで、企業側からのアクションが何もない状態でも、顧客が顧客を呼び込む良い連鎖を生むことができます。
CX向上のためには、
カスタマージャーニーマップとは、顧客が商品やサービスを知り、利用・購入し、その後、どう感じたか、どうなったかという顧客体験の一連の流れを「旅」になぞらえて可視化したものです。CX向上のためには当然、顧客情報の適切な収集と管理、分析が重要になります。カスタマージャーニーマップの作成は、顧客視点で一連の流れを可視化していくことで、優先すべき課題の洗い出しを行うことにつながります。
カスタマージャーニーマップの作成には、まずペルソナの設定が必要となります。年齢、職業、趣味嗜好、居住地といった属性をできるだけ絞り込み、具体的に可視化していくことが重要です。そのためには自社で保有している過去の顧客情報と突き合わせて、より実際の顧客に近づけていくことが必要になります。
次に、顧客が商品やサービスを知ってから、導入を検討し、実際に導入し、導入後にどのように行動するかを時系列で整理します。さらに、それぞれのタイミングでどのような感情をもつか、自社との接点をどこに持つかといったことも整理していきます。
情報の収集に当たっては、部門の垣根を超えた情報共有、管理・分析が必要となります。異なる部署同士で問題の認識をすり合わせておくことも重要です。
カスタマージャーニーマップの作成は、対象となる業務範囲が複雑で多岐にわたるため、最終的な着地点をシンプルに、かつ明確に共有しておくことも大切です。
CX向上は競合優位性を高め、自社ブランドの価値を押し上げるために重要な取り組みです。まずは自社の現状を洗い出すところから始めてみてはいかがでしょうか。
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