真にユーザーに喜ばれるサービスや商品を提供するためには、ユーザーのインサイトを的確に把握していなければなりません。
しかし、現実では、購買後に接点が切れてしまったり、接点はあるものの一方通行の情報発信しかできず、ユーザー状態が把握できなかったりと、さまざまな課題を抱えている企業も多いのではないでしょうか。
本記事では、リアルタイムで深いインサイトを取得したい方向けに、コミュニティがユーザーリサーチに最適な理由をご紹介いたします。
「新商品のコンセプト開発のために、より踏み込んだユーザーインサイトを取得したい」
「商品のリニューアル後に、ユーザーがどのような意見を持ったのか、リアルタイムで知りたい」
「商品の継続的な改善のために、ユーザーから定期的に意見を集めたい」
このように、顧客の利用実態を把握したい、インサイトを取得したいと考えている企業は多いでしょう。 しかし、こうしたユーザーリサーチには多くの壁が存在します。
『サイト上にはヘルプページしか用意されていない』『問い合わせセンターは対応時間が限られており、なかなかつながらない』。このような状態では、ユーザーは声を届けたくても届けられないでしょう。
メルマガやSNSなど、積極的に情報発信をしている企業は多くありますが、一方向の発信に留まってしまっているケースも多いのではないでしょうか。
対面・電話・メール・チャットツールなど、顧客情報がバラバラになっているため社内で連携が取れず、取得したデータの効果を最大化できないことがあります。
行動データからインサイトを読み解くのは難しいでしょう。デジタルな接点を用意したとしても、インサイトを取得するには課題があります。
こうしたユーザーリサーチの壁は、一般的に消費財、中でも特に消費者の思考が購買選択にあまり影響しない低関与商材や、そもそも接点が持ちにくいシニア層向けの商材においてよく見られます。
こうした課題を克服する手法として、注目されているのが『MROC(エムロック)』です。
『MROC』とは、コミュニティを形成することで、消費者のインサイトを抽出するリサーチ方法です。
オンライン上で「商品やサービスのユーザー」、あるいは「特定のテーマに興味関心がある人」を集めて、クローズドなコミュニティを構築します。参加者の行動や会話を観察したり、インタビューやアンケートを組み合わせたりすることで、インサイトを多面的に探索します。
"Market Research Online Community"の略称で、特に欧米では半年以上の長期にわたり、100人以上の大規模コミュニティで行われることが一般的です。
MROCは従来型の調査方法と比べて、より”深い”インサイトを取得できると言われています。その理由は主に以下の2つです。
ユーザー同士の会話の中には、素直な意見や感想が多分に含まれているでしょう。企業に対する遠慮・配慮が働きづらく、また同じ立場で思いを共有できるからこそ、より自然な発言につながりやすいのです。
そもそも「コミュニティ内でユーザー同士の会話は生まれるのか?」と疑問に思う方もいると思いますが、実は意外とユーザー同士の交流を求めているユーザーは多いと言えます。
その理由として、①ユーザーの持つリアルな現場情報には価値があるから、②ユーザーの方がサービスに詳しいことが多いから、の2つが挙げられます。
おそらく、具体的な活用の仕方や取り組みの工夫といった、リアルな現場情報を一番持っているのはユーザーでしょう。こうした情報は、サービスの利活用を進める上で、本来的には非常に重要かつ効果的なものです。しかし、企業が提供することは困難でしょう。だからこそ、ユーザー同士の意見交換には需要があるのです。
また、ユーザーがサービスの使い方に一番詳しいというケースも存在します。特に、プロダクトの特性が”活用できて初めて価値を発揮する”、”使い方が幅広い”という場合は、その傾向にあるでしょう。たくさんのユースケースが存在するため、実際に日々現場で使用しているユーザーの方が新たな使い道や有効な活用方法を見つけやすいのです。
活用の幅が広ければ、当然多くの疑問が生じることになります。その場合、問い合わせセンターやチャットボットに質問するよりも、コミュニティでユーザーに質問した方がよりスピーディかつ満足のいく回答が得られる可能性が高い、と考えるユーザーは多いのではないでしょうか。
通常、ユーザーが企業に意見を言う場合は、顔の見えない相手に対し一方通行的に投げかける形になります。企業は、もらった意見の全てを反映することはできません。そのため、ユーザーが「ないがしろにされた…」という不満を抱いてしまうこともあるでしょう。
コミュニティであれば、企業担当者もいち参加者として存在しています。ユーザーは特定の相手に対して意見を言うことができ、直接フィードバックを受け取ることができます。企業とのやりとりに透明性が担保されるようになるので、意見を言うモチベーションにもなるでしょう。
「一人一人とコミュニケーションをとっていたのではコストがかかりすぎる」、と考える方もいるかもしれません。しかし、コミュニティの場合、過去のやりとりが蓄積され、それを他の人も参照できます。そのため、重複したやりとりをせずに済むのです。
この点において、個別に対応しなければならない問い合わせやメールよりも、サポートコストを削減できる可能性があります。
また、オープンな場でのやりとりであれば、他のユーザーも反応できます。そのため、企業は、ユーザーのリアクションやコメントをもとに、意見の重み付けをすることができるのです。
いろんな意見をもらっても、「結局何が重要なのか?」と迷うこともあるでしょう。別ユーザーが反応してくれることで、企業は、ユーザーが本当に望んでいる要望を判断することができるのです。
その場限りの調査では、「使い続けたことによる意見の変化」を収集することは難しいでしょう。しかし、コミュニティであればやりとりが蓄積されていくため、ユーザー心理の移り変わりを知ることもできます。そのため、長期間にわたって使用されることが前提の商品や、使い続けることで印象や評価が変化しやすい商品などは、MROCでの調査が適していると言えます。
また、日用品などは最たる例ですが、使用環境が日々変化する商品においても、MROCは効果を発揮します。例えば、化粧水などは、その日の天気や気温、行く場所、食べるもの、疲労度などによって使用感が変わってくるでしょう。商品を使い続けたらからこそわかる評価の変化も、MROCであればキャッチすることができます。
インタビューの場合、数時間で行われることが一般的です。限られた時間の中では、議論を発展させたり相手の深い心理まで理解することは、あまり望めません。
その点、長期間にわたり継続するMROCであれば、時間の制限による問題が解決されます。より深い議論や意見交換を期待できるのです。
また、継続的に接点を保てるからこそ、新たな課題や意見をスピーディに収集することが可能です。
ユーザーの意見を順次取り入れて、継続的に商品を改善していくためには、ユーザーの意見や課題を素早く収集する必要があります。しかし、1回限りの調査では、対象や項目など、入念に検討・設計して実施する必要があります。集計結果が出る頃には、競合が新商品を投入して市況が変化していたり、また新たな課題が顕在化していたり、ということが起こってしまうでしょう。
コミュニティであれば、いつでもコンタクトを取れるため、即座にフィードバックをもらうことができます。ユーザーの反応を取り入れた、アジャイル型の商品改善をすることができるのです。
MROCは知りたいことを「尋ねる」のではなく、知るべきことを「探す・見つける」手法です。
インタビュー調査は、調査主体の知りたいことを取得するには十分でしょう。しかし、ユーザー自身も言語化するのが難しいような、本当の行動原理を知るには十分とは言えません。
インタビューをする側とされる側が設問を通してやりとりをしているだけでは、調査設計にない想定外のインサイトが発見されることはないでしょう。
MROCであれば、対象者同士のコミュニケーションを客観的に観察します。会話を通して、対象者自身が新たな気づきを得ることも往々にしてあります。自然な会話であるからこそ、ユーザーの本当の心理に近づくことができるのです。
また、インタビューの場合、聞き漏らしがあっても後から確認することは困難ですが、MROCならいつでもコンタクトを取ることができます。
ユーザー同士の自然な会話を観察する、という意味ではSNSと大差がないように感じるかもしれません。実際、SNSに投稿された内容を調査・分析して、自社の製品・ サービスの改善に活かすことを
しかし、SNSとコミュニティでは以下のような点で違いがあります。
・コミュニティの方が、クローズドであるため、本音を引き出しやすくなる。特に、趣味嗜好に関することやコンプレックスに関わることなどは、匿名でやりとりしたいという人が多い。プライベートな投稿も混在しているSNSでは、発言をためらいやすい。
・コミュニティの場合、特定の共通点を参加の条件にすることができる。そのため、参加者の仲間意識が高まり発言が活発になりやすい傾向がある。
・コミュニティの場合、参加者の詳細なプロフィールが分かるので、ペルソナ(顧客像)の把握や発言内容の的確な解釈が可能となる。企業担当者の介入も可能なので、適宜質問を追加することで、より確実な理解ができる。
commmuneを利用し、ユーザーインサイトを取得している事例をご紹介いたします。
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