インサイドセールスは、営業の分業モデルにおいて、「オンラインセールス」「内勤営業」を担う部門を意味します。マーケティングのあと、商談の前の段階の顧客にアプローチし、具体的な商談に繋げていく役割を担っています。
一方、フィールドセールスは、実際に顧客と対面して関係性を構築・受注に繋げる外勤営業を指します。
インサイドセールスとテレフォンアポインターの違いについては、テレフォンアポインターの仕事をどのように理解しているかによっても異なります。「大量のリストを渡されて、上から順番に片っ端から電話を掛け、ひとまずアポイントを取り付けること」と考えているのであれば、それはインサイドセールスとは異なる仕事といえるでしょう。このあたりは企業がどのようにテレフォンアポインターにミッションを課しているかによります。テレアポも特殊技能なので、インサイドセールスのほうが難易度が高く、優れているということでもありません。
インサイドセールスは、大量にある見込み顧客の中から優先度の高い顧客を精査し、商談に繋げていく役割を担っています。顧客の興味関心の段階や希望する時期などを考慮し、適切なタイミングで適切な情報を提供し、顧客に寄り添い、ニーズに応えていくことをミッションとしています。
そもそもインサイドセールス、フィールドセールスという考え方は、Salesforceが提唱する「The Model(ザ・モデル)」という営業プロセスの分業モデルが元となっています。
「The Model」では、「営業(セールス)」を、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスという各プロセスに切り分けて考えています。そのプロセスの数値化・見える化を行いながら顧客満足度を高め、成約率・継続率を向上させることを目的とした分業モデルです。
マーケティング:来訪者、見込み顧客を増やしていくという営業の最初のフローを担います。
インサイドセールス:見込み客との密なコミュニケーションを図り、育成することで案件化を目指します。
フィールドセールス:案件の受注を目指します。合わせて商談管理も担います。
カスタマーサクセス:活用支援を行い、契約継続を目指します。
ここでは、インサイドセールスという考え方が現在普及するに至った3つの要因、「顧客の購買プロセスの変化」「営業スタイルの変化」「サブスクリプション型モデルの台頭」について見ていきたいと思います。
消費者が情報を持たなかった時代には、いかに製品の魅力や特長を伝えるかが営業担当者のミッションでした。ところがインターネットの普及により、消費者が容易に製品情報やサービス情報にアクセスすることができるようになり、他社との比較・検討もインターネット上で完結することが多くなりました。
これにより、消費者が企業側に接触を図る段階では既に購買意欲が高い状態であり、製品・サービス選定までのプロセスがブラックボックス化しました。
また、インターネットの普及は、顧客接点を増やし、複雑化しました。自社サイト、SNS、セミナーや展示会からの問い合わせフォーム、メールマガジンなど、幅広い顧客接点の中で、見込みのレベルがさまざまで膨大な顧客に対し、均等にリソースを配分することは非効率です。そこで、訪問・商談といった、いわゆるフィールドセールスに重きを置いていた従来の営業手法から、商談に至るまでのプロセスに重点を置いたインサイドセールスという考え方が普及するに至りました。
一昔前までは、いわゆる「Push」型の営業手法が採られてきました。つまり、訪問・商談数を増やし、製品やサービスの特徴を理解してもらうことを重視した営業スタイルです。ところが、前述の通りインターネットが普及したことで消費者はインターネット上に散りばめられたさまざまな情報を自由に検索、比較検討して製品・サービスの検討を行えるようになりました。これにより、必要な情報をいかに適切なタイミングで適切な相手に届けて顧客からのレスポンスを待つか、といういわゆる「Pull」型の営業手法に変化することとなりました。
それに伴い、営業担当者に製品やサービスの基本的な性能や特長の解説より、自社・自身に即したカスタマイズ、最適化を求めるように変化しました。営業担当者が一種のコンサルティングも担う「ソリューション営業」の役割が大きくなった、ともいえるでしょう。こうなるとますます一人の顧客に対して担う役割が大きくなるため、顧客の見極め、分業が重視されるようになりました。
顧客視点では、サブスクリプション型モデルは月額課金制で手軽に始められ、辞めやすいというメリットもあります。しかし企業側からすれば、買い取り商品ではない分、いつ辞められるか分からないという危険を孕んでいます。このため、契約継続を推進するために、成約後の顧客満足度の維持・向上といったアフターフォローの重要性も増してきました。
ここでもやはり、従来営業担当者が担ってきた役割だけでは対応しきれず、顧客対応が複雑化・多様化したことによりPull型の分業の重要性が増してきたといえるでしょう。
インサイドセールスの導入手順、メリットや注意点はどんなものがあるでしょうか
生産性の向上
分業化による生産性の向上は大きな利点です。より確度の高い顧客に対して商談することができるため、案件化からの受注率向上が期待できます。
営業プロセスの見える化
各プロセスを分業化して部門ごとに数値目標を設定することで、営業プロセスが見える化され、改善に繋げやすくなります。
顧客満足度向上
顧客の興味関心の段階に合った営業活動を行うことができるため、顧客との関係性向上、満足度向上が期待できます。
密なコミュニケーションを行うこと
同一の案件に対して複数人が関わるチーム制となるため、密なコミュニケーションが必要となります。
正確な情報管理には、
有用性を担当者によく理解してもらうこと
インサイドセールスの目的、有用性を担当社員にあまり理解してもらえていない場合はモチベーションが上がりにくく、人員配置に苦慮する可能性があります。重要な役割を担っていることをよく理解してもらえるよう、人員配置の際の該当者への対話は慎重に行う必要があります。
自社に合った設定を行う
当然ですが、やみくもにインサイドセールスを導入すればいいというわけではありません。
各プロセスの切り分け方、目標設定は各社さまざまです。プロセスごとの目標設定に整合性があるか、自社に適したプロセスの切り分けになっているかなど、きちんと目的や事業内容と照らし合わせた設定になるよう慎重に設定しましょう。
1: 全体設計
自社の事業や風土に合わせて、全体設計を考えます。
インサイドセールス、フィールドセールスが具体的にどこまでの業務範囲を担うのか、各プロセスの目的・目標値をどこに設定するのかを決めるところからスタートします。
次に、インサイドセールスをどの部門に紐づけるかを検討します。多くは営業部門やマーケティング部門に紐づけることになりますが、場合によってはインサイドセールス部門を独立させることもあるかもしれません。
枠組みを決めたら人員配置を考えます。人員が枯渇する場合には、外注もうまく組み合わせるとよいでしょう。
2: 業務への落とし込み
組織と人員が決まったら、次に具体的な業務への落とし込みが必要です。顧客情報の収集、リストの作成、シナリオ・トークスクリプトの作成や具体的な
3: 導入、業務改善
準備が整ったら実際に運用しながら数値の設定、トークスクリプトの改定など改善活動を行っていきましょう。
インサイドセールスは、複雑化する営業活動には不可欠の存在です。是非一度、営業全体のフローを見直し、分業化モデルの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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