近年、商談につなげるリード数を増やすために、新たなリードを獲得するのではなく獲得したリードを育てるリードナーチャリングが注目されるようになりました。
今回は、そもそもリードナーチャリングとは何かという基本から、リードナーチャリングのメリット、さらに具体的な手法まで解説したいと思います。
リードナーチャリングとは、将来的な契約・受注につながるように、見込み顧客(リード)に対し購買意欲を高めるアプローチを取るプロセスを指します。
リードとは、「将来的な契約・受注につながる見込みがあるとされた顧客」のことです。見込みがあると判断する基準は企業によって異なりますが、一般的には自社のサービス・プロダクトに関心があることが判明しており、資料請求や名刺交換などにより接点を持っている状態、とする場合が多いです。
ナーチャリングとは「育成」という意味です。
継続的なアプローチを取り見込み顧客の購買意欲を醸成する様子が育成に例えられることから、このようなプロセスのことをリードナーチャリングと言うようになりました。
潜在顧客の中から見込み顧客を見つけ出すところから、最終的に商談への確度を高めた状態で営業にパスするまでのプロセス全体のことをデマンドジェネレーションと言います。 デマンドジェネレーションは以下の3つのプロセスに分けることができます。
①リードジェネレーション
ー 潜在顧客の中から見込み顧客を獲得する
②リードナーチャリング
ー 獲得した見込み顧客の購買意欲を高める
③リードクオリフィケーション
ー より商談へとつながりやすい見込み顧客(ホットリード)を絞り込む
リードナーチャリングは、デマンドジェネレーションの一プロセスになります。前後の関係を理解することで、リードナーチャリングがどのような役割を果たすのか、より理解しやすくなるでしょう。
リードナーチャリングを行うことによって生じる具体的なメリットには、以下のようなものがあります。
リードナーチャリングを行うことによって見込み顧客の行動が可視化できるようになり、温度感を把握できるようになります。
例えば、「今までメールの開封率低かったがここ1ヶ月で見てくれるようになった」、あるいは「一度接点を持ったきり連絡が途切れていたが再び資料をダウンロードしてくれた」といった行動の変化があった場合、購入意欲が上昇していると言えるでしょう。このように見込み顧客の温度感を把握できると、適切なタイミングで適切なアプローチを取ることができるようになります。
これまでの一般的な営業方法では、幅広い対象にアクションをしていました。しかし、リードナーチャリングを行うことによって、受注確度をある程度判断することができます。そのため、受注確度の高い顧客に絞った効率的なアプローチをとることができ、無駄なテレアポや訪問などの工数を減らすことができます。
受注確度をある程度判断できることによるメリットは、効率的なアプローチが取れることだけではありません。受注確度の低い顧客に対して効果的なアプローチを取ることで、機会損出を防ぐこともできるのです。
営業リソースは限られているので、受注確度が低いと判断した顧客に対しては、特に連絡することもなく放置してしまう場合も多いかと思います。しかし、そのような顧客であっても、市場や顧客自身の状況の変化により再び自社のサービス・プロダクトに興味を持ってくれることは十分に考えられます。
その際にこれまで何のフォローもしていなければ、競合他社に流出してしまうかもしれません。リードナーチャリングにより関係性を維持しておくことで、こうした機会損出を防ぐことができるのです。
一般的に、新規リードを開拓する方が、既存リードをフォローし商談につなげるよりもコストがかかります。広告やキャンペーン、展示会の出展など、多額の費用をかけて新規リードを獲得したとしても、受注確度の高いリードは一握りでしょう。残りのほとんどのリードをフォローしなければ、可能性のあるリードの多くを逃してしまうことになります。
リードナーチャリングを行うことによって、現時点では温度感の低いリードであっても購買意欲を醸成することができ、集客コストのロスを削減できます。特に、過去に商談や取引に至ったものの現在はやりとりがない休眠顧客は、一度は興味関心を抱いているため、再び受注につながる可能性が高いと言えます。
リードナーチャリングを行うメリットはこれまで説明した通りですが、昨今特にそのメリットが強調されるようになってきました。
背景として、インターネットの普及が挙げられます。インターネットが普及し、顧客がリードでいる期間の長期化、そしてリード数の増加が起こったことで、リードに対してどのようなアプローチを取るかが商談につなげるための重要な要因になったのです。どのような変化が起こったのか、詳細を説明します。
従来、企業がサービス・プロダクトの購入を検討する際には、必要な情報は営業から手に入れることが一般的でした。インターネットが普及する以前は、情報を取得する手段がかなり限られていたのです。
しかし、インターネットが普及し取得できる情報量が格段に増加したことで、顧客は営業と連絡を取る前に自ら情報を収集し比較・検討できるようになりました。
特にBtoBの場合、商材自体の単価が高く、また意思決定に複数人が関わることから、検討から購入に至るまでの期間は比較的長くなる傾向にあります。インターネットの普及は、この傾向に拍車をかけることになりました。
だからこそ、見込み顧客に対して、継続的に情報を供給し接点を持ち続ける必要性が高まっているのです。
サービス・プロダクトの認知から商談までの期間が長期化している現在においては、接点を持ち続ける取り組みをしないと容易に顧客との距離が遠ざかり、機会損失につながってしまいます。リードナーチャリングによって比較・検討期間に信頼関係を築く努力をすることで、長期にわたる競合との比較に耐え抜き、商談にまで繋がる可能性が高まるでしょう。
インターネットの普及は、リード獲得数にも変化をもたらしました。かつて、リード獲得方法と言えば、オフラインでの展示会・セミナー、テレアポ、飛び込み営業、折り込み広告など限られた種類しか存在しませんでした。
しかし、インターネットの普及によりオンラインでも顧客接点を持てるようになった結果、コンテンツマーケティング、ディスプレイ広告やリスティング広告・動画広告などのWeb広告、ウェビナー、SNS、メールマーケティングなど、非常に多様なリード獲得方法が現れました。
リード獲得方法の多様化は、リード獲得数の増加につながります。当然、リードが増えれば、直近の商談には繋がらないような確度の低いリードが含まれる割合も増えます。
だからこそ、獲得したリードに対して、購買意欲を向上させる継続的なアプローチが必要になるのです。
リード獲得数が増加した現在においては、リードごとの温度感の差も大きくなっています。中には、一度資料請求を行ったものの、それ以降何のアクションもないような温度感の低いリードもあるでしょう。しかし、何らかの興味関心があって情報を入手したことには間違いありません。獲得したリードを無駄にしないために、リードナーチャリングによって購買意欲を喚起し商談に至るまでの確度を上げることが重要なのです。
リードナーチャリングにはさまざまな手法が存在します。効果を最大限発揮するためには、幅広く検討し複数手法を組み合わせることが有効です。今回は、代表的な3つの手法を紹介します。
(1)メール
メール配信は、代表的なリードナーチャリングの手法です。必要なものはリードのメールアドレスのみと開始ハードルが低く、開封率やクリック率など効果測定がしやすいという特徴があります。メール配信には、いくつか種類があります。
・メルマガ
リスト上の顧客に対して、同じメールを一斉に配信するやり方です。一度名刺交換をした顧客でも、既に商談が進んでいる顧客でも、属性や状況に関わらず全員に同じ内容が配信されるので、「機能アップデート」や「自社イベント開催のお知らせ」など多くの顧客に伝えたいタイムリーな情報発信に使われます。
・ステップメール
メール内容を段階的に設計し、顧客の行動を基準にして配信するやり方です。メールを受け取る側の興味関心の度合いに合わせて適切な情報を届けるので、購買意欲を段階的に向上させることができます。
・セグメントメール
顧客を年齢や性別、行動で分け、そのターゲットごとに最適と考えられるメールを配信するやり方です。顧客を条件ごとに分ける=セグメントするため、セグメントメールと呼ばれています。ユーザーの興味関心に合わせた情報を届けられるため、開封率やクリック率が上がりやすくなります。
(2)SNS
スマホが普及した現在において、SNSで発信される情報は顧客の思考や行動に大きな影響を与えています。SNSでのリードナーチャリングはBtoCにおいて一般的ですが、BtoBでも有効です。ミレニアル世代が企業の中で購買の意思決定プロセスに関わるようになったことで、より重要性が増すようになりました。
SNSは、新着記事や新機能情報などのお知らせを投稿し、コーポレートサイトやオウンドメディアへ誘導するのに適しています。また、既存顧客からの発信も、見込み顧客にとっては貴重な情報となるはずです。 情報の拡散力に優れており、潜在顧客へのアプローチも期待できます。
(3)Webコンテンツ
オウンドメディアなどを運用し、記事や動画、ホワイトペーパーなど様々な種類のコンテンツを用意することは、リードナーチャリングの有効な手法の一つです。
顧客の購買意欲を向上させるために大切なのは、真に有益な情報を発信することです。情報があふれている現代社会において、質の低い情報を多く揃えても顧客の注目を引くことはできないでしょう。むしろ、この企業は信頼できないと敬遠されてしまう可能性もあります。顧客の感情を動かせるような情報を提供することで、顧客との関係性を構築することができ商談につながるのです。
特に、事例コンテンツは購買意欲を喚起する効果が高いと言えます。顧客は、実際にサービス・プロダクトを利用した企業の意見・感想を信頼しやすい傾向にあります。自分と同じ立場の人間が発信した内容だからこそ、共感しやすいのです。
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商談件数を増やすためには新規リードの開拓を重視すべきと考えている企業は多いと思いますが、それと同じくらい既存リードのフォローも大切です。特に、インターネットの普及により、購買プロセスの長期化、獲得リード数の増加といった変化が起こり、より一層既存リードの温度感を高めて商談につなげるインパクトが増すようになってきました。紹介した、メール配信、SNS、Webコンテンツといった手法を組み合わせつつ、いかに顧客との関係を維持・発展できるかを考えることが大切です。
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