※本稿はオンラインセミナー「〜カスタマーサクセス概論〜攻めのCS!今後5年の新潮流「カスタマーサクセス2.0」徹底解説〜」の一部を記事化したものです。
今回は、今後5年の新潮流「カスタマーサクセス2.0」についてお話します。
まず、カスタマーサクセスとは「自社サービスやプロダクトを通じた顧客が求める成果創出、課題解決を担保・促進すること」です。
では「カスタマーサクセス2.0」とは何か。
「カスタマーサクセス2.0」とは2018年1月にアメリカのコンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーが提唱した概念です。
「カスタマーサクセス2.0」は、カスタマーサクセスがどんな事業でも普遍的に取り入れられ、事業推進の中での役割もより大きいものになることを表しています。
具体的には二つのポイントがあります。
カスタマーサクセスに取り組む業界の変化を表したのがこちらの表です。
カスタマーサクセス1.0では、カスタマーサクセスはBtoBのSaaSのみで活用されていました。
しかし、カスタマーサクセス2.0では、BtoBのSaaSのみならず幅広い業界に普及しています。
そもそも、SaaSには「サブスクリプション型」「ソフトウェア」という二つの要素があります。図から分かるように、SaaS以外の「非サブスクリプション型」や「ハードウェア」のサービスを提供する企業でもカスタマーサクセスの取り組みが行われています。
また、BtoBだけでなくBtoCの企業においてもサブスク・非サブスクを問わずカスタマーサクセスに取り組む企業が増えてくると推測されます。
実際に昨年は、タニタや丸井グループにおいてカスタマーサクセス部が立ち上がっていますし、今年1月の人事発表では花王においてもカスタマーサクセス本部長が就任されています。
このようにSaaS業界に限らず、幅広い業界でカスタマーサクセスの重要性を認識し始めていることが分かります。
カスタマーサクセス1.0での役割は、更新時の
それは言わば、場当たりで火消しをする。加点はなく、失点はあるというイメージです。解約をすれば失点で、解約をしなければプラスマイナスゼロなので、全体的に守りの側面が強くなります。
しかし、カスタマーサクセス2.0でのカスタマーサクセスの役割は、チャーン防止に限らず、事業の成長エンジンとして「カスタマーライフサイクル全体を最適化すること」です。
カスタマーサクセス1.0では、セールスが
一方でカスタマーサクセス2.0では、解約リスクのマネジメントを引き続き行いながら、アップセル・クロスセルに挑戦し売上の最大化に取り組むことが役割となっています。
さらには、既存顧客における
実際に、当社のお客様におけるカスタマーサクセス2.0の具体例をご紹介させていただきます。
左は、RPAのソフトウェアを提供するユーザックシステム様の例です。
ユーザックシステム様は、コミューンが提供する顧客ポータルを通じてチャーン改善を実現しています。
また、チャーン改善のみならず、サポート工数の効率化やセールスの受注率向上、プロダクトフィードバックをより多く効率的に取得することが出来ています。
このように、従来の役割であるチャーン改善を大前提としてそれ以外の幅広い役割を果たしており、カスタマーサクセスが、価値を創出する事業成長エンジンとして機能しています。
右は、ホットクックという調理家電を提供するシャープ様の例です。
このホットクックは電気調理鍋で、BtoCの生活者向けかつハードウェア、売り切りモデルのサービスです。
この製品に対し、カスタマーサクセスプラットフォームを活用したカスタマーサクセスに取り組むことで、実際にお客様のホットクック活用度がグンと上がっています。
売り切りモデルの場合、活用度が上がっても大きな意味はないと考えられやすいのですが、活用度が上がることでオプション品の購入などのアップセルが発生します。
非サブスク型かつBtoCの領域で、既存のお客様への提供価値の最大化に取り組んだことによって、アップセル・クロスセル、マーケティング・セールスやプロダクト開発への有意義なフィードバックが実現しています。
カスタマーサクセス1.0からカスタマーサクセス2.0へ発展させ、事業成長を牽引するためには5つのポイントが重要です。
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カスタマーサクセスを「部門」から「理念」へ昇華させることが必要
カスタマーサクセスを幅広い企業の中で価値提供することを考えると、カスタマーサクセスを部門から理念のレベルに昇華させることが必要です。
そのためには、カスタマーサクセス以外の部門が、いかにカスタマーサクセスに繋がるような形で事業に取り組むかが重要となります。
例えばシャープ様の事例で申し上げると、シャープ様では、お客様から製品についてのフィードバックをいただいた後、製品に反映するものとしないものを仕分けた上で実際にそれをいくつかの製品に反映させ、お客様にお伝えするというプロセスを回しています。
この例とは逆に、例えば、製品開発の部門の方が「自社のプロダクトは優れている」と考え、お客様の意見に耳を傾けなかったり、サポート部門の方が、フィードバックをしたお客様に返答をしないというカスタマーコミュニケーションのあり方だと、カスタマーサクセスになりづらく、お客様に対しての価値提供が最大化されないと考えています。
シャープ様の素晴らしいところは、他の部門含めて全社で「お客様への価値提供を最大化すること=自社のサクセス」と認識している点であり、これはカスタマーサクセスにおいて非常に重要なポイントです。
この認識を共有するためには、カスタマーサクセス部門が組織への理念浸透を牽引することが求められます。
カスタマーサクセス (お客様の成功)が会社の収益の最大化のために最重要であり、経営判断の指標であるという理念の浸透と、カスタマーサクセス部門の活躍を両立させることが重要なのです。
提供価値拡張のために、CS部門の役割や他部門との連携について定義が必要
カスタマーサクセスの業務範囲を広げれば広げるほど、役割が曖昧になってしまったり、他部門と被ってしまうという問題があります。
これは、カスタマーサクセスが経営判断の指標として重要視されるポテンシャルがあるため、やろうと思えば提供価値を拡張させ他部門の仕事もカスタマーサクセスの役割に内包できてしまうからです。
企業では、大半が部門ごとにそれぞれの役割を全うし成果を最大化させています。
この企業体制の中で、どこまでをカスタマーサクセスで担い、どこからマーケティング・セールスに依頼するのか、部門間での役割のすり合わせ・連携を定義をすることが重要です。
また、その際はカスタマーサクセス部門の成果最大化を優先するのではなく、全社的なカスタマーサクセスの推進のために、部門がどう動くべきかという視点から役割の定義・設計が必要だと思います。
カスタマーサクセスの提供価値を拡げるための投資基準の明確化と実行が必要
カスタマーサクセスの提供価値を広げるためには、先行投資と投資基準の明確化、投資の実行が必要です。
もし、意思決定者の方にカスタマーサクセスの役割はチャーン防止のみと認識されていたら、本来果たすべき役割であるアップセル・クロスセル、マーケティング・セールス・プロダクト開発へのフィードバックは追加リソースがかかるだけでROIが悪いと考えられてしまいます。
故に、カスタマーサクセスの役割の拡張や組織貢献はセットでカスタマーサクセス全体の投資のご判断をいただくこと、そして会社全体としてカスタマーサクセスに投資していくというスタンスをとっていただくことが重要です。
カスタマーサクセスへの投資が必要な理由は、カスタマーサクセスは結果が出るのが遅いからです。
カスタマーサクセスの場合だと、取り組んでいる指標が遅行指標、結果指標の側面が大きいため、先行投資を行い事前にカスタマーサクセスへの投資を実行していただく必要があります。
価値提供を加速するための“タレントエンジン”が必要
価値提供を加速するカスタマーサクセスを強くするためには、タレントエンジンが非常に重要です。
タレントエンジンというのは、優れた方を採用し、成長に導き成果を出していただくことです。
まず一番最初すべきことは、カスタマーサクセスの価値を最大化するために必要な人材の要件を定義することです。
日本においてカスタマーサクセスは新しい概念であり、多くの候補者の方はカスタマーサクセス未経験だと思います。
その場合だと、自社商材あるいはお客様の特性を考えた時に、どういった経歴の方が良いかという基準は企業ごとに異なるので、自社に最適なカスタマーサクセスの要件定義は真っ先に行うべきです。
その上で、ご入社した場合にはカスタマーサクセスの中で必要なスキルやレベルを定義し、自身の位置づけを見える化してトレーニングすることが重要です。
最後にすべきことは、キャリアパスの見える化です。
カスタマーサクセスは比較的新しい概念ですので、カスタマーサクセスに取り組んだその先にどんなキャリアを形成できるのか、道筋を示すことが重要です。
戦略的・科学的・効率的CSが必要
テクノロジーを活用して戦略的・科学的・効率的にカスタマーサクセスに取り組むことが必要です。
カスタマーサクセスに求められる役割やカスタマーサクセスが適用される業界業種が広がる中で、気合いや人力に頼ったアプローチには限界があります。
そのため、テクノロジーを活用してスケーラブルな形でカスタマーサクセスに取り組むことが非常に重要です。
加えて重要なことは、高度な分析やデータ連携に取り組むよりも前に、顧客接点をセットアップすることと、カスタマーサクセスのオペレーションのワークフローを確立することです。
ハイタッチ・テックタッチ・ロータッチの仕組みを確立した上で、その仕組みを最適化する手段としてテクノロジーの活用をすることが最終的な成果に繋がります。
以上、カスタマーサクセス2.0に発展して事業成長するための重要な5つのポイントをお話させていただきました。
少しでもみなさまのお役に立てたら嬉しいです。
本日はありがとうございました。
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